夜想 /貫井 徳郎
事故で妻と娘をなくし、絶望の中を惰性でただ生きる雪籐。だが、美少女・天美遙と出会ったことで、雪籐の止まっていた時計がまた動き始める。やがて、遙の持つ特殊な力は、傷ついた人々に安らぎを与え始めるが…。あの傑作『慟哭』のテーマ「新興宗教」に再び著者が挑む。魂の絶望と救いを描いた、渾身の巨篇。
貫井徳郎さんの「夜想」を読みました。
貫井さんと言えば、デビュー作の「慟哭」が非常に話題になりましたが・・・・。今回の「夜想」は「慟哭」と同じく、宗教というか、人はいかにして救われるか、というようなテーマ。私は「慟哭」でトリックを見破れなかった人間なので(ちょっとは疑ってたけど、確証が持てなかった)、素直に好きです。「慟哭」は。
そんな作品とテーマが似ている本作。
うーん、どうも登場人物に感情移入ができなくて、最後まで来ちゃいました。主人公の苦しみはもっともだし、誰かに救いを求めたい。そして救ってくれた人がいたから、それを誰かに広めたい。そういう気持ちは分からないでもないけど、主人公が取る行動や、天美遙への思いに共感できなかった。主人公が天美遙を特別視、神聖化しすぎているようにも思う。遙は遙で、なんだかリアリティがあるんだかないんだか。
「慟哭」では主人公がある行為にのめりこんでいく行動はなんとなくわかるんだよね。愛する人を失って、それをなんとしてでも取り返したいと願う気持ちが。
「慟哭」と何が違うのか、自分の中でも未消化なんですけど。
ただ、乗り越えられない悲しみもあるから、それは無理に乗り越えなくてもいいんじゃないか、という言葉は胸にしみました。
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